吹奏楽、室内楽の楽譜出版社Golden Hearts Publicationsのブログ

吹奏楽、室内楽の楽譜出版社Golden Hearts Publications(ゴールデン・ハーツ・パブリケーションズ)のブログです。

どんな工程なの?Golden Hearts Publicationsの楽譜が世に出るまで

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今日は「そういえばこの話はしたことなかったな」と思うのでどんな流れでGolden Hearts Publicationsの楽譜が世に出ていくのか、出荷されて皆様のお手元に届くのか、という話をしてみたいと思います。

 

Golden Hearts Publicationsの楽譜、特にフルスコアにビオトープという用紙を使っているDX版は他の日本の出版社の販売譜と比べても高いですよね。高いと思います。

一般的に販売譜、というとスコアはA4サイズで、印刷所に大量発注して一冊あたりの原価を下げて、大量に在庫して安く販売するか、自前で印刷製本機を持っていればそれでガシャコンとやって、パート譜はA3サイズで2ページ印刷したものを社員が手折り、という感じかなと思います。(会社によってやり方はそれぞれ)

 

Golden Hearts Publicationsの場合は、吹奏楽の楽譜に関しては吹奏楽のフルスコアって指揮台に立って指揮したり指導するときにA4だと見づらいよね」という考えなので、すべて仕上がりA3サイズ(またはB4も選べます)にしています。また開きやすいようにWコイルまたはリング製本にしています。DX版はWコイルです。

 

これを製本するにはかなり大きな製本機が必要で、おそらくですけどチョー高いです。これは現状では用意出来ないので、印刷所にお願いしています。

 

もうひとつ、在庫するスペースも先払いする予算もない弱小一人チームなので、印刷所を全国100社以上あたって、下記の条件でお願いできるところを探しました。

・スコア1冊から印刷可能

・仕上がりA3でコイル製本出来る

・仕上がりA3でリング製本出来る

ビオトープ仕入れるルートを持っている

パート譜1部から印刷可能

特に条件が厳しいのがサイズと発注ロットですね。これが合う会社が全然ない。

結局すべて広島にあったんですが(笑)、上記すべてを納得できる金額で、となると1社ではまかないきれないので、DX版のスコアをお願いする会社、安価版をお願いするする会社、A4以下のスコアやパート譜をお願いする会社、で3社に分けてそれぞれご注文内容に合わせて発注先を変えています。なので例えばDX版スコア+パート譜セット、の場合は2つの会社に発注して組み合わせたりします。(片方はスコア、片方はパート譜

 

いよいよ本題です(前置きとして知っておいて頂きたいことが長かった)。

 

まず出版する場合。

この場合は作編曲家の方と作品ごとに契約書を交わします。(マンチン・ドナルド・ユーさんの場合はちょっと特殊な契約で最初に契約書を交わして、あとは新作が出来たら送られてくる仕組みになっています)。

こちらは個人事業主なのでJASRACに出版社として作品を登録出来ないため(法人だったら何でも登録できるかっていうとそうでもないんですけど)、日本の場合は作品を出す前に必要に応じて作家さんにJASRACなどの音楽著作権管理団体と信託契約をしてもらい、作品を届け出してもらいます。

こちらへの入稿は2種類あって、作家さんが浄書をしない場合と、作家さんが自分で浄書する場合です。

浄書をされない場合は、作家さんからFINALEなどのデータを預かって、それを浄書家の方にお送りして浄書を発注します。見積書を確認します。それで問題なければ浄書を始めてもらいます。浄書家の方と作家さんの間で必要に応じて、細かなやり取りをしてもらい、こちらでも最終チェックをして、その後ようやく浄書家さんからFINALEなどのデータとPDFを納品してもらいます。

この時点で作家さんへのデータ入稿料と浄書家さんへの浄書料が発生しています。(結構高いよ)

作家さんが自分で浄書する場合は、浄書が終わってからPDFで入稿してもらいます。これも納品されたあとに入稿料をお支払いします。

PDFが届いてからはすぐに出せるのですが、「出しましょう」からPDF納品までで数ヶ月、またはそれ以上かかったりします。(うちの場合ですよ)


もうひとつの形態、海外で自費出版している作家さんの作品を日本で印刷・販売代行する場合。この場合は彼らは自分で(または自分の会社で)浄書しているので、PDFで納品されます。契約後に「ちょっとレイアウトの手直しするわ」といって数ヶ月時間がかかることもあります。(皆さん忙しいからね)

 

どちらの場合もPDFが納品された後、PDFをスコア、パート譜ともにこちらでチェック。何か明らかにおかしいところがあれば修正をお願いし、特に問題がなければ原価計算をして販売価格を決めていきます。

パート譜は単純に枚数ではなくてページ数によっても価格が変わるのでページ数までチェックして商品マスタにページ数、枚数などを打ち込んでいくと原価が算出されるようにしています。原価には作家さんへのロイヤリティー(1部売れたらいくら、ってやつ)も含まれます。基本的には販売価格は利率に基づいて決められます。(うちは利率メッチャ低く設定しているので依頼があっても卸売は出来ません、そのくらい利率低いです)

 

このようにして販売価格が決まったら、下記のように販売準備を進めます(一人で黙々と)

・表紙のデザインをして印刷用のPDFとウェブ用のJPGを準備
・パート編成表を作る(印刷会社確認用とウェブ掲載用)
・オーディオファイルを提供されている場合はYou Tube動画を作る
・ストアに商品を登録するためのCSVファイルを作る
・商品登録する

で、ようやくドーンと表に「販売開始ー!」と出てきます。その後でGolden Hearts Publicationsと同じくONSA(要は僕)が運営しているセレクトショップのWBP Plus!2店舗、Yahoo!楽天市場にも商品登録します。フォーマットが違うのでちょっと厄介。

同時に作家さん用にスコアを発注して、納品されたら作家さんに送ります。(代行以外の出版作品の場合)

ここまでで基本的に関わってくるのは
・作家さん
・浄書家さん
・作家さんの会社のスタッフ(場合により)
・私
だけですが、アレンジ楽曲でPD出ない場合は著作権者の方に先に編曲と出版の許諾を得なければいけないのでその方々も関わってきます。


そしてさあ、待望のご注文!ここからも色々な人の手をお借りします(印刷所の皆さんです)。JASRAC管理楽曲の場合は先にJASRACに出版だか複製だかの申請をします。毎回します。毎回違う管理番号をもらってからその管理番号を入れたPDFを作成します。スコアの3ページ目(背表紙の裏)かな。そういった印刷に必要な入稿データをまとめて、発注書を作って印刷所に投げます。

 

・スコア1冊から印刷可能
・仕上がりA3でコイル製本出来る
ビオトープ仕入れるルートを持っている

これが出来る会社は東京に2社、広島に1社見つかったのですが東京は1社は仕事がすべてにおいて雑だったので切り捨てて、1社は印刷製本費は広島の会社と見積もり金額はほぼ同じだったけど送料が高い(サイズが大きいですからね)ということで広島の会社にお願いしています。同じ市内なので車でピューッと納品してくれるので送料0円。助かります。

DX版の注文が来たらこの会社にビオトープのスコアを発注します。(パート譜は後述)

▼この機械を使っているかどうかは分からないけどこういうのが置いてある印刷所

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ただ相当イレギュラー対応をしていただいているので、印刷機にかけるにあたって他の印刷物・製本物の空いた隙間に1冊ねじ込む感じで、納品に7営業日くらいかかります。1冊だろうが100冊だろうがデータ処理の工数は変わらないそうで、これはもう仕方がない。ねじ込んでいただいてありがたいです。


安価版は皆さんご存知キンコーズさんにお願いしています。個人で利用する場合や、会社によっては自前の印刷機を使わずにキンコーズさんで印刷する会社もあると聞いたことがあります。

▼10月に300mほど移転するらしいです(今知った)

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キンコーズさんの魅力は仕上がりの速さですね。キンコーズさんもお店によって色々と違いがあると思いますが、僕が頼んでいる店舗はA3/B4サイズの製本は出来るけどリング資材を常置していないので、原稿を入稿すると同時に物理的にこちらで用意したルーズリングを郵送します。それが先方に翌日には届くので、それから印刷・製本に入るのですが、翌々日くらいには出来上がった製品がこちらに届きます。(ちょっと受け取りに行けないので納品は郵送にしてもらっています)


A4サイズ以下(A4含む)のスコアや、パート譜だけを頼む会社は家の近くにあるのでそこに発注をします。印刷所は呉市にあるそうで、中2日くらいでうちの近所の営業所に届くみたいです。簡単で少数の印刷だけなら営業所でやってくれるみたい。2-3日で「出来上がりましたよー」と連絡があるので「じゃあ今から伺いますねー」といって自転車で取りに行きます(坂道があるので結構ハード)。

▼こんな感じらしいです(僕は受付までしか行ったことない)

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パート譜1枚から安価でオーダー出来るフットワークの軽さが魅力ですが悲しいことにニコニコ現金払いなので売上の入金より先にお金が出ていきます。この辺りは注文が増えれば改善される予定です。

ちなみに最初はリング製本が出来なかったのでこの会社にお願いするつもりはなかったのですが、「何かお役に立てるかもしれない!お話を聞かせて下さい!」と営業の方が食い下がるので(言い方)、実際にお会いして(近いから)「こんなものをなるべく安く作りたいんですが」とお話した結果、パート譜1部から出来るというスーパーメリットが生まれたわけですね。このおかげでパート譜単品販売が実現しました。

 

こうして仕上がったものを梱包してお客様の元にお届け、となります。A3/B4サイズのスコアが含まれている場合はクリックポストなど投函式の郵送方法が使えないので、近所の郵便局が空いている平日に出荷。A4サイズで配送方法がゆうパックでなければ、土日でも出荷出来ますが、土日に納品されることはほとんどないので基本的にはどれも平日に出荷ですね。

 

あとは郵便局の皆様に頑張っていただいて、皆様のお手元に届きます。ありがとう郵便局の皆様。

 

いろんな人が間で関わっているのと、発注ロット1冊でやってもらうのでそれなりのお値段になります。とはいえこれでも1冊からの発注でこの値段に抑えられているのでかなり安い方です。その代わり大量発注してもそんなに値引きはないでしょう。なので在庫するってなったらまた各印刷会社と交渉ですね。

 

会社によってやり方は色々ですが、Golden Hearts Publicationsの場合はこんな風になってます。という紹介でした(長かったね)。