
今日はちょっと考え事というか、最近こんな感じだな~というお話をしてみようと思います。
Golden Hearts PublicationsのストアでもアメリカのMurphy Music Pressの商品を多く扱っています。
実は(というほどでもないですが)Murphy Music Pressの作品の多く(全部かも?)は、各作家のホームページでPDF販売という形で自費出版されています。
各作家はPDFを自分のブランドから自費出版(販売)して、印刷版をMurphy Music Pressから流通させているという形です。印刷版にはMurphy Music Pressのロゴが入る場合と入らない場合があります。
なぜアメリカや他の地域の作曲家の多くがいまMurphy Music Pressから出したがるのかというと、ある作家さんから聞いた話では「作家の取り分」が他の出版社より多いんだそうです。
それはつまりMurphy Music Pressの取り分が少ないということになります。薄利多売のモデルですね。そうでもしないと印刷版を販売する権利をもらえないのかもしれません。
作家の自費出版(ほとんどの場合PDFのみ)は最近のトレンドとしてあるみたいで、日本でもだんだん増えてきているように思います。
国内でも印刷版の販売代行をしている出版社もありますが(Golden Hearts Publicationsもそうです)、出版社としては、印刷版の権利を預けてもらえても、作家さんのPDF販売サイトが競合になるので、凄く難しい立場です。
これまで通りのやり方で稼ぐのはどんどん難しくなっていくんじゃないかなと思います。
作品を預けてもらうためにはただ単に「販売します、プロモーションします」だけでは足りなくなってきているような印象を受けます。
他に方法がなかった時代と違って、今は作家さんが自分でPDFを販売して自分でプロモーション出来る時代なので、力関係というかパワーバランスというか、そういうものが変わってきているのかもしれませんね。
将来的に出版社はもう不要になるんじゃないか?という気もするのですが、PDFでは予算が降りないという団体もあるので、なんだかんだで印刷物の需要がなくなることはなさそうです。
とはいえ出版社に求められる役割は変わっていきそうですね。
「稼ぎたいけど見せ方はコントロールしたい」
「プロモーションは任せたいけど取り分は増やしたい」
「面倒なことは任せたい」
「自分の思い通りのものを作ってほしい」
そういった作家さんの要望に応じなければいけなくなってくるかもしれません。もちろん作家さんによります。
作家さんと出版社の間で積み上げてきた信用や信頼とはまた別のレイヤーの話です。
一昔前のように、
「有名ブランドの我が社から出してあげるよ」
「昔からよく知ってる間柄なんだから作品ちょうだいよ」
では通じない時代に入っているんじゃないかなとも思います。
出版社といえば楽譜担当者の目利きもポイントだと思いますが、日本に関して言えば「コンクール全国大会金賞受賞作品」とかのコンテスト実績のほうがありがたがられるので、もう目利きも求められていない気がしますよね。
単に金が欲しいだけの出版社ならどんな手を使ってでも「コンクール全国大会金賞受賞作品」を片っ端から契約していくのが手っ取り早い、そんな業界なんじゃないかなと思います。
コンサートレパートリーに関して言えば目利きは必要かなと思いますけれど、コンサートのプログラミングが「どんなアレンジでもいいのでJ-POPの流行曲をたくさん演奏します、それ以外はコンクールの曲くらいしか演奏しません」が主流になったら出版社の目利きも必要なくなるかもしれません。
なんだか夢も希望もない話になってきましたね。でもまあありえない話でもないですね。将来はいつでも未知です。
話を戻すと、出版社に入る利益と労働量(または経費)の関係で見た場合に、自費出版トレンドが進んで作家さんと出版社のパワーバランスが変わってくると、楽譜の販売だけで見ると今までよりも出版社側のボランティアっぽさが増えていくのでしょう。
しかし出版社はその中で会社全体として利益率を維持する工夫をしていかなければいけません。
時代の流れには逆らえない部分もあるので、今は目に見えて何かが変わっていなさそうな出版社でも、ジワジワとなにかが変わっていくんでしょう。
各出版社の各経営者(または経営陣)によって考え方もそれぞれ違うので、会社ごとに違った方向性の動きがでてくるんだろうと思います。淘汰も起きるかもしれませんね。
それでも基本的には作家さんも出版社も、この過剰供給の時代、なおかつ昔の大編成作品が日本では売れない時代に自分の作品を買ってもらうためには、今までよりもさらに消費者にとっての便益を考えて行動しなければいけないので、このトレンドの変化というのも誰にとっても悪くないビジネスモデルが出てくるきっかけになるでしょう。
市場をどう捉えるか、どういうポジションを取るか、などの基本的な戦略の見直しも検討する余地があるかもしれません。
僕自身も含めて自分の会社でその「誰にとっても悪くない」ビジネスモデルを作れるように、柔軟に動ける状態が理想かなあと思いながら動向を見ています。
とはいえ、あまり時代の最先端に合わせた商品やサービスを展開しても理解を得られない業界ではあるので、どこまでトレンドに対応するかのさじ加減も難しいところですね。
この仕事をする意味について考えることが増えてきている昨今です。
いやはや、難しいんですよなかなか、というお話でした。商売はそこが面白いんですけれどね。