吹奏楽、室内楽の楽譜出版社Golden Hearts Publicationsのブログ

吹奏楽、室内楽の楽譜出版社Golden Hearts Publications(ゴールデン・ハーツ・パブリケーションズ)のブログです。

なぜ日本で売れていない作曲家を取り扱い続けるのか?

f:id:goldenhearts:20211122150107j:plain




こんにちは!

Golden Hearts Publicationsの梅本です。


今日は「なぜ日本で売れていない作曲家を取り扱い続けるのか?」というタイトルで少し思うところを書いてみます。


日本には吹奏楽をメインとした多くの出版社があります。

各社色々な方針があって、コンクールで演奏された作曲家を一本釣りするような印象のところから、若くてまだ作品の少ない作曲家を青田買いする印象のところまで様々です。

出版とひとくちにいっても色々ありますが、共通しているのは「ビジネスである」ということです。慈善事業ではありません。

どんな曲を出版するかは、主に経営者や楽譜出版事業担当者のビジョンと、ビジネスとして成り立つラインの間で、落とし所を探していくような感じになります。

パレートの法則のようなもので、2割の人気作品による売上利益が8割のその他の作品の出版を支えているような感じだと思います。

国内を見ている感じだと、売れっ子作家をいかに自社に引き込むか、というような感じも見受けられて、「花いちもんめ」みたいな雰囲気もありますね。

そんな中でもちょっと変わったラインナップでやっているのがGolden Hearts Publicationsです。

Golden Hearts Publicationsから出版している作品も、日本人だけではなく香港や台湾、イタリアの人と契約して、Golden Hearts Publicationsの作品として世界中で販売しています。

例えば海外の作編曲家であれば下記のような作家さんがGolden Hearts Publicationsから作品を出版しています。

 

マンチン・ドナルド・ユー(余文正:Man-Ching Donald Yu) 
https://www.goldenheartspublications.com/?mode=grp&gid=1697982&sort=n

 

イッポリート・パリネロ(Ippolito Parrinello) 
https://www.goldenheartspublications.com/?mode=grp&gid=2393852

 

トマゾ・ミランダ(Tommaso Miranda) 
https://www.goldenheartspublications.com/?mode=grp&gid=2363146&sort=n

 

ヴィト・ラ・パグリア(Vito La Paglia) 
https://www.goldenheartspublications.com/?mode=grp&gid=2356765&sort=n

 

ミケーレ・カラメラ(Michele Calamela) 
https://www.goldenheartspublications.com/?mode=grp&gid=2362550&sort=n

 

ピカルバンド / カルロ・ピロラ(Picarband / Carlo Pirola)
https://www.goldenheartspublications.com/?mode=grp&gid=2518498&sort=n


台湾のスーユー・ホァンは、デジタル版は彼女が自費出版(自分で販売)していますが、自費出版作品の「印刷版」は世界でGolden Hearts Publicationsだけが販売しています。

スーユー・ホァン(黄思瑜:Ssu-Yu Huang)
https://www.goldenheartspublications.com/?mode=grp&gid=1630089&sort=n


その他にも、「海外で自費出版している作曲家の作品を日本国内で印刷代行する」というGolden Hearts Publicationsの最初のやり方で多くの海外の作編曲家と契約しています。

きっかけはディートリヒ・ヴァンアケリェンでした。

これについてはブログでも何度も書いてきましたね。

ディートリヒ・ヴァンアケリェン(Dietrich Van Akelyen)との出会い - 吹奏楽、室内楽の楽譜出版社Golden Hearts Publicationsのブログ


そして出版・印刷以外にも、日本では他に扱っている会社がほとんどなかったであろう会社の作品も輸入で扱うようになりました。特に量が多いのが「Murphy Music Press」です。

Murphy Music Press 
https://www.goldenheartspublications.com/?mode=grp&gid=1660140&sort=n


きっかけはデヴィッド・ビーデンベンダーというすごい作曲家の人がいて、その人がどうやら自費出版している様子だったので、Golden Hearts Publicationsの話を振ってみたことから始まります。

彼は自費出版ではなくて、Murphy Music Pressから楽譜を出版していました。今ではMurphy Music Pressはアメリカで影響力のある会社になりましたが、当時はまだ出来たばかり。

ですが、すでにポール・ドゥーリー、スティーヴ・ダニュー、そして後に日本でも音大が作品を取り上げることになるケヴィン・デイ、ジェイムス・デヴィッドなどの作品を扱っていました。自費出版作品の流通と、自社からの出版の2つのパターンを持っている会社です。

インボカシオンが日本でも売れたルイス・セラーノ・アラルコンの自費出版作品も扱っていて、Golden Hearts Publicationsでもプロモーションしていたのですが、ご存知のとおり、日本での流通はルイス・セラーノ・アラルコンの意向で一社独占契約になり、現在Golden Hearts Publicationsではお取り扱いできません。


これらの人は日本では当時おそらくマニアの方にしか知られていなくて、「何を書いたか」よりも「誰が書いたか」が重視される世界ではなかなか売れないだろうということは分かっていましたが、とにかく作品のクオリティが高いので、Murphy Music Pressの社長のショーンと相談し、日本では輸入販売をすることにしたわけです。

売れないだろうと思いながらもなぜそれを取り扱うのか、ビジネスに長けた他の日本の出版社の人には理解されないかもしれないのですが、一言で言えば「刺さった」んですよね。

尖っているものは深く刺さりやすいです。でも形がいびつなので、聴き手の「受容型」と形が一致しないと刺さらない。

逆に尖りを削って丸くしていくと、深くは刺さらないけど、より多くの人に受容されます。

どちらも大事なことです。ビジネスですからね。

ですがビジネスを前に進めるためには情熱も必要です。

僕の場合はGolden Hearts Publicationsで扱っている作品も、Murphy Music Pressのカタログから選んでいる作品も、もしくはWBP Plus!で扱っているマイナーな出版社の作品も、丸くはないかもしれないけど、少なくとも僕には深く刺さっています。

これらの作品が、今はまだ売れていない作品のほうが多いのですが、他の誰かにもきっと刺さると信じています。

これが僕がMurphy Music Pressの作品や、Golden Hearts Publicationsから様々な「日本で有名ではない」人の作品も扱っている理由です。「刺さると信じる力」がエネルギー源ですね。

より多くの人に刺さるには、より多くの人に聴いてもらわないといけません。演奏される機会がもっと増えるように、今回のブログのような形も含めて様々なプロモーションを行いたいと考えています。

僕も含めて、受容する側の「型」が、わりとどんな尖りも受容できるように変容していけばよいのですが、人それぞれの好みや感受性を変えることは出来ないので、作品に出会う機会を増やしたいなというところですね。

ほかにもアーロン・ペリンとも輸入の契約をしていて、彼の作品もオススメです。さすがオストウォルド賞受賞者。彼の作品もぜひ聴いてみてください。

 

アーロン・ペリン(Aaron Perrine) 
https://www.goldenheartspublications.com/?mode=grp&gid=1734527&sort=n

 

というような感じで今日は「なぜ日本で売れていない作曲家を取り扱い続けるのか?」ということについて少し思うところをお話してみました。


ぜひこの記事にリンクが張ってある作家さんや出版社からでも良いのでたくさんの曲を聴いてみてほしいですし(どこにあなたにピッタリの作品が眠っているかわからないですよ!)、お気に入りの作品が見つかったら、フルスコアだけでも良いのでぜひご注文ください!


ではまた!