こんにちは!
Golden Hearts Publicationsの梅本です。
今日はGolden Hearts Publicationsにまつわる「なぜ?」を掘り下げていく感じで。
まずはあらためて「なぜ大判スコア?なぜ高い?」という話をしてみようと思います。
Golden Hearts Publicationsの吹奏楽の「スコア+パート譜」セットに含まれるスコアは、大判スコアを採用しています。A3かB4から選べるようになっています。
なぜ大判スコアなのかというと、吹奏楽の現場で僕自身が見聞きしてきた「拡大コピー」の実態がまずあります。
Wind Band PressでもJASRACさんに確認しましたが、
基本的には部活動など「個人の私的な複製以外」の複製については倍率に係わらず著作権が働くのです。
出版社にまずは拡大コピーをしていいかどうか(倍率変更していいか)を確認した後に、JASRACに複製手続きが必要です。やり方については上記記事に書いてあるので、他社さんの楽譜を拡大コピーする前にぜひ読んでみてください。(複製にはたいていの場合お金がかかります。)
で、著作権法違反をするとどうなるのか、というと、民事請求を起こされる可能性、刑事罰の対象になる可能性があります。
どちらも部活が存続の危機に瀕する事態になりそうですよね。
とはいえ出版社から一般に販売されている吹奏楽の楽譜(レンタル楽譜以外)は、だいたいの場合はスコアがA4サイズなので、指揮・指導の際にはよく見えません。
なので指導者や顧問の先生などから「これ拡大コピーしておいて」と頼まれて、(著作権のことなんてほとんどの学生は知らないから)著作権関係の手続きをすっ飛ばして学校やコンビニのコピー機で「違法コピー」をしてしまうことになります。
そういう実態があるということは経験上知っていたので(当時は僕も著作権のことよくわかってなかったですけど)、販売楽譜であってもスコアは大判を基本としたほうがよかろうな、と考えたのが、Golden Hearts Publicationsのセットが大判スコアが基本となっている主な理由です。
実際に著作権的にNGとわかっていても、権力者から「これ急いで拡大コピーしておいて」なんて言われたら、出版社への確認とJASRACへの複製手続きなんて、やらないと思うんですよね。時間もかかるし、何より精神的に面倒ですよね。
もちろん手続きはやらないといけないし、急いでいても電話一本でなんとかなると思うので手続きしてほしいですし、先生や指導者にも理由を説明すれば許諾が降りるまでに1日くらいかかりますよってことも理解されると思いますのでやってほしいんですけど。
でも、面倒。
最初から拡大されていればいいじゃないか。なんで学生が指示されてコピーして製本までしなきゃいけないんだ。
というわけでGolden Hearts Publicationsは大判スコアです。個人で楽しむようにA4サイズのスコアも単品販売していますし、指導者が増えた場合に備えて大判スコアだけの単品販売もしています。
で、Golden Hearts Publicationsの吹奏楽のセットって他社さんの同じくらいの編成や長さの販売楽譜(レンタルじゃなくて)に比べると高いんですけど。
これの主な理由がこの大判スコアです。
Golden Hearts Publicationsは自前の印刷製本機とか持ってないんで(メチャクソでかいしリース組まないと買えないくらいに高いし製本わかってる人がいないとリング製本もおかしな製法になる)、印刷製本は印刷製本のプロに任せようということで、印刷所にすべてお願いしています。
印刷所の方とも色々話すのですが、やはりA4サイズを超えると、一気に値段が跳ね上がるんだそうです(安く出来ないってことです)。
そして現状、まだそんなに売れていないので、1冊ずつ受注生産しています。これもまた高いです。
まとめて10セットとか印刷すれば少しは単価が下がるのですが、大判スコアの場合はあんまり変わらないかなー・・・
もちろんたくさん売れるようになって、どのサイズが特に売れる、ってのがわかれば、先に大判スコアを一気にまとめて発注して、全体的に販売価格を抑えることも出来ると思います。
決して暴利をむさぼっているわけではなくて、現状でも利益は少なくしていて、例えば小売店に卸売をするだけの利率の余裕すらないくらいに薄利にしていて、この価格です。
とにかく大判スコアの印刷製本受注生産が高いです。
ですが、
・A4スコアの拡大コピー可否を出版社に確認
・JASRACに複製手続き
・JASRACから許可を得る
・JASRACにお金を払う
・拡大コピーする
・製本する
という一連の手続きと手作業にかかる時間と経費と手間を考えると、やっぱり最初から大判スコアで用意してあげたほうがいいんじゃないか、と思います。
いまのところ著作権って親告罪(権利者自信の訴えによってのみ成立する罪)なので、見て見ぬ振りというか、権利者の好意で「まあええよ」と見逃してもらっている感じだと思います。
でも権利者(作曲者など)には「複製されたら印税を得られる」権利があるので、出版する側としてそれを「なしでイイっすよね」とは言えないわけです。
出版事業者として権利者の権利を守ることもしなければいけません。レンタル楽譜だから権利者を守る、販売楽譜だから権利者を守らない、という区分けは存在しません。
【まとめ】
・A4サイズのスコアを指導用に拡大コピーする場合、出版社への確認と、JASRACなどの著作権管理団体に複製手続きが必要。お金もかかる。
・最初から大判スコアで販売しておけば手間がすべて省ける。
・大判スコアの印刷製本費(原価)は高い。
・出版事業者として権利者の権利も守らないといけない(違法コピーを容認しない)
そんなわけでした。ご理解いただければ幸いです。
Golden Hearts Publicationsのストアはこちらです。他社さんよりGHPが出版する吹奏楽の楽譜は高いかもしれないけど、上記のような理由をご理解いただいて、ぜひご購入いただければと思います。
https://www.goldenheartspublications.com/
そのほか著作権関係の話はWind Band PressでいくつかJASRACさんに取材をしていますのでここでもリンクをまとめておきますね。
ではまた!